伝統的な都市住宅である町家。
格子や通り庭、火袋、坪庭といった京町家の特徴的な意匠や、長い年月をかけて刻まれてきた味わいは、新築の住宅にはみられない特徴です。また、日々自然との対話を楽しむことができるなど、町家での生活を考えるとその魅力は尽きません。
そこで、その魅力・メリットと、事前に意識しておきたいポイントについてまとめてみました。
町家や古民家住まいの最大の魅力は…
町家や古民家住まいのメリットは、その建築特性による自然光や風通しなどによる自然を感じる工夫や、当時の文化を体感できるメリットではないでしょうか。
建築特性によるメリット
町家の建築特性には、自然の魅力を存分に感じることができるメリットがあります。町家は広い空間や風通しの良さなど、自然との調和が取れた建築スタイルを持っています。この特性により、自然光が豊富に取り込まれ、独特な魅力ある居住環境が提供されます。また、夏には風を感じることができたり、坪庭や中庭の草木の色づきなど、町家に住むことで、自然の営みや四季の移り変わりを身近に感じることができるでしょう。
文化的価値とその魅力
町家には日本の歴史と文化が息づいています。その美しい外観や伝統的な建築様式は、町家が存在する地域の歴史と風土を反映しています。町家を所有することで、所有者自身が日本の歴史や文化に触れることができ、その魅力を存分に味わうことができるのはメリットの1つです。
また、町家が多く残る地域は、地元のイベントや祭り、伝統行事などが盛んに行われ、地域のコミュニティに深く関わることができます。町家の中で暮らすことで、地元の人々との交流や地域に根差した生活を楽しむことができることも魅力です。
事前に知っておきたい、町家や古民家住まいの注意点
町家や古民家住まいには、自然を感じる工夫や当時の文化を体感できるメリットがある一方、暑さ寒さ問題をはじめとしたデメリットも。
そこで、その魅力と、事前に意識しておきたいポイントについて、京町家を拠点に―京町家の魅力と配慮点(京町家等継承ネット)を参考にまとめてみました。
性能について
音の問題
大きな通りに面する場合などでは、歩行者や車の音が気になることも。
立地によっては外部騒音対策が必要となる場合があります。
長屋の場合は、隣戸からの騒音にも留意する必要があります。住戸の内部では、上下階の騒音(足音、話し声)や襖越しの物音が結構聞こえます。
暑さ寒さ問題
京町家は床、壁、屋根に断熱材が入っておらず、床下に外気を通す構造で、建具の気密性も低いため、思いのほか夏は暑く、冬は寒くなります。エアコンがついてない物件もあるため、事前にチェックが必要です。
通り庭は直接地面と繋がっている土間となっているため、冬の寒さは特に厳しいです。
安全性について
構造安全性
老朽化に伴って建物の構造安全性が低下している怖れがあります。
建物の耐震診断は、伝統構法のための特別な診断方法が必要。耐震補強を行う場合は、伝統構法に詳しい専門家に相談することをお勧めします。
建物のセキュリティ対策
一般的な京町家の場合、玄関建具が木製で、道路に面して窓ガラスがあります。現代の建具に比べると容易に壊れてしまい、一般的な建物に比べるとセキュリティのレベルは低くなります。
そのため情報管理への配慮を行う場合や警備システムを導入する方も。
設備について
収納
通常、押入れなどの収納スペースに鍵がありません。
必要に応じて鍵を取付けたり、新たに収納スペースを作ったりするなどの対策が必要となります。
照明
京町家の構造上、屋内照明は暗めの設定です。
自然の光を利用する魅力もありますが、インテリアに配慮しながら、照明器具の選定を行う必要があります。
水回りの改善
京町家の中には、長年リフォームがされていない建物もあります。
トイレや手洗いなどの水回りが古く、利用するために、増設やリフォームが必要になる物件も見かけられます。
WIFI環境
昨今リモートワークをする方も増えてきました。
ネット環境の充実を考えると、多くの場合必要な性能を有するインターネット回線を新たに引き込む必要があります。
リノベーションや物件選びで解決できることも
これまでにデメリットや注意したいポイントをあげましたが、賃貸なのか購入なのか、リノベーション済みなのかそうでないのかによって、その重要度や緊急度は異なります。
物件を購入する場合は、リノベーションなどで解決できないか立ち会ってくれている不動産業者に相談してみて解決策を検討することができます。各都道府県で、リノベーションに対して補助金や支援制度があるので、そちらも参考にしてみてみてください(京都の場合はこちらをご参考に)。
賃貸でお探しの場合は、町家や古民家を探す際の「絶対に譲れない条件」と「あったらうれしい条件」によって、デメリットを減らすことが可能です。
ぜひ、「デメリットがあるから、やっぱりやめよう」ではなく、さまざまな選択肢を検討して、素敵な物件を探してみてください。