住む前に知っておきたい、京町家の特徴

京町家

「町家」は、広義での町家は文字通り「町の中の家」、今での都市住宅のこと。

そのスタイルも時期や地域、あるいは産業によって背景が異なるため、商家などの屋敷では“町屋”、民衆の自宅を“町家”とするなど、使い分けている例も見られますが、京都であれば、京“町家”と記載されています。

京町家とはどのようなものを指すのでしょうか?その特徴を知ることで、活用もしやすくなるはず。調べてみました。

京町家・町屋・古民家など、地域によって呼び方はいろいろ

高山 町家

町家は、近代日本の都市部での民家を指すと考えられています。

そのスタイルも時期や地域、あるいは産業によって背景が異なるため、商家などの屋敷では“町屋”、民衆の自宅を“町家”とするなど、使い分けている例も見られますが、町家がどんな建築物かを指しているのかと同様に、地域や話者によって言い回しが異なります。“古民家”と表記される例もすくなるありません。

江戸の町家は町人の住む「長屋」が町家といえるし、金沢や姫路など城下町として独自に生まれてきた町家もあれば、倉敷や川越、柳井といった蔵を中心とした独自の街並みもあります。

全国的にみると人によって、場所によって解釈が異なり、全国的には統一した定義はみかけられません。日本全国にある、伝統的な軒を連ねた“都市型”の住居を指すことが多く、都市圏はもちろん、地方の城下町や宿場町、港町、門前町、在郷町など、地域によってその見た目はことなります。皆さんのイメージする奥行きが深い作りの町家(いわゆる“うなぎの寝床”)だけではありません。

実は厳密な定義がある京町家

京“町家”と記載されるように、京都では“京町家”と呼ばれいています。

平成29年11月に京町家の価値を改めて見直し、保全・継承に繋げるため、「京都市京町家の保全及び継承に関する条例」(京町家条例)が制定されました。

この京町家条例では、建築基準法が施行された昭和25年以前に建築された木造建築物で、伝統的な構造及び都市生活の中から生み出された形態又は意匠を有するものを「京町家」として定義しています。

京町家とは

出典:京町家の総合情報サイト「1.京町家を保全・継承するために」

公益財団法人京都市景観・まちづくりセンターでは、京町家の外観に関する評価をまとめた京町家プロフィールを整備し、所有者やその関係者の認識を深め、適切に維持・管理、および流通されることを目指しています。

※1 建築年が不明な場合は、法務局で閉鎖登記簿(有料)を取得いただくと記載されている場合があります。

※2 「平入りの屋根」とは?建物の出入口が屋根の棟と平行する側(平)にあるもののこと。「『平入り屋根』の条件が適用されない場合」に該当するものは、適用されません。

京町家の4つの特徴

平安時代の中期にその起源を持ち、千年の歴史に育まれてきた伝統的な木造軸組造による都市住宅「京町家」。今日の建築様式となったのは江戸時代中期といわれています。平成19年度版「京町家改修技能者マニュアル」(京都府建築工業協同組合)には、その主な特徴は4点だと記載されています。

人と人を介して成立する家々の暮らしや町のなりわいを支えてきた合理的な空間構成。今日の住まいのように扉一枚で家の内と外を隔てるのではなく、道行く人と家人との関わりの度合いによって内と外を多様につないできたのは京町家の特徴の1つです。

例えば、通り庇は、あるときは雨宿りに、あるいはばったり床机を出して展示や休憩に、幔幕を張ってお祭りの演出にと実に多様に使われ、通りの公的な空間と内側の私的な空間の間にある半公共的な空間を形成してきた。格子も、視線を適度にさえぎりながら明るさを確保すると共に、柔らかい防犯装置として軒下の半公共的な空間の機能を高めてきました。

さらに、表の間は、店や応接の場として使われ、家に用事のある人は気軽に入れる場所であり、さらに通り庭を奥に入ったはしりは、家人に用事のある人が立ち入り、最も奥にある座敷は、その家にとって大切な客人だけが立ち入ることを許されてきました。

こうした人のかかわりを前提とした空間構成が、都市の中に住みながらも円滑な人間関係の形成を支え、生活と商いを両立させてきました。

京町家とは

高密度な都市の中で、快適な暮らしと都市居住文化を形成してきた自然との豊かな関わりも特徴の1つ。

植栽の施された奥庭と表の通りとの温度差によって、人工的な風の流れを屋内に取り込む。坪庭や大きく開かれた開口部は、その効果を一層高め、蒸し暑い夏を心地よく過ごす工夫がみられる。また、御簾や葦戸などによる夏の模様替えは、風通しを良くするだけでなく、屋内にさし込む光の具合や素材感などによる涼感を演出してきた。

内より見る四季折々の庭は、季節や天候により様々に変化し、日々の暮らしに潤いをもたらし、暮らしの文化を形成してきました。

第三には、柱や梁といった構造部材が表に現れる、力強く優美な内外観です。特に火袋や通り庇を支える出桁や腕木垂木、さらには大和天井などの木組みの繰り返しのリズム感やプロポーションなどに代表されます。

第四には、細部にわたって洗練された素材と造形です。格子、通り庇、虫籠窓、土壁の構成は華奢で洗練され、また暖簾、簾御簾などで季節ごとのしつらえをおこないます。

京町家の魅力を高める、先人の知恵と想いを感じる意匠

京町家とは

京町家の魅力の1つが、暮らしの中で工夫を積み重ねながら発展してき知恵と、細部にわたって洗練された素材・造形です。

格子、通り庇、虫籠窓、土壁の構成は華奢で洗練され、また暖簾、簾御簾などで季節ごとのしつらえをおこないます。

虫籠窓

京町家 意匠

通りに面した2階外壁に設けられた、土塗格子(虫籠格子)を並べた窓。

幕府の周辺眺望規制により周辺を見渡せる大窓の設置が禁止されたため、広まったと言われています。

虫籠窓は通風と採光を確保しつつ、外部からの視線を遮る役割を果たします。また、火災時には炎の侵入を防ぐ効果もあります。

ばったり床几 / 揚げ見世・見世棚

京町家 意匠

前を通る人に商品を見せるために使われていた「見世棚」。壁際に跳ね上げて収納するので「揚げ見世」とも。仕舞屋風の町家が増えて対面販売が減った際には、「ばったり」とも呼ばれていました。

通行人が一休みするための場所として利用され、地域の人々や訪問者が自然に集まり、交流する場になっていたようです。

火袋

火袋

建物の中央部分に設けられた吹き抜け空間。

この構造は、炊事による熱や煙などを逃がす役割を担い、空気の循環を促進します。

表に水を打った京町家には、涼やかな風が舞い込み、夏には暑さを和らげ、冬の煙の排出を助ける機能も果たしていました。

通り庭

通り庭

玄関から奥へと続く細長い通路状の空間です。

玄関から裏庭や中庭までを貫くこの空間は、通風や採光を確保し、家全体に自然の風と光を取り入れる役割を果たします。

通りに面した場所は客人の対応や作業場になる「店庭」、おくどさんを置く炊事場は「走り庭」と呼び分けて使用されていました。

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